東京レコーディング。

作曲家村山達哉さん紹介。

朝までレコーディング。
(大野まゆみ担当)
大野まゆみ点と線を追え!のドラマロケが無事に終わって、細見さんは連日ダビングにむけての準備に追われている。私はロケには何度か行ったものの、忙しそうな細見さんを尻目に、手伝いらしいことは何もしていなかった。そんな中で、少し気になることがあって、細見さんのいるスタジオにいってみた。

「あの〜、スケジュールに“点と線、東京音楽録り”って、入ってるんですけど・・・。ひょっとして私が行くんですか?」
「あ〜、本当は俺が行ったほうがいいけど、ど〜かな〜・・・。準備が終わらんたい。ディレクターも来てもらったら助かるて言いよったしねえ。」

《うっ・・・・・行きたくない》

結局出張の日ギリギリまで様子をみることになった。

前日。
「やっぱり準備が間に合わんみたいやけん、悪いけどお願い。」

《・・・いやだなあ・・・行っても何もできん・・・。第一、このドラマをちゃんと把握できてない・・・どうしよう・・・》

まゆみごしの6mm
でもそんなことも言ってられないのだ。私は覚悟を決め、最終の飛行機に乗るためいざ福岡空港へと向かった。さすがに空港内は静かだったが、右の方から「きゃ〜きゃ〜!」という声。何なんだと顔を上げた瞬間、私も「きゃ〜!!」となりそうになった。TOKIOのメンバーだ。これで少し気持ちが楽になった。

《これは運がいいってことなんだ》

と、自分に言い聞かせて3時間後には東京に着いていた。

この日はナレーション録りが入っていたが、さすがに24時をまわるころには作業が終わり、2日前から来ていた井上ディレクターや音声の北嶋さんはホテルに帰った後だった。私も明日に備えるためにすぐに寝た。

いよいよ音楽録り当日。作曲家の村山達哉さんはアシスタント2人とマネージャーさんとバイオリンを演奏する@@@@@@さんを引き連れて来ている。その人たちはテキパキといつでも作業が開始できるようにスタンバイしていた。実は私、音楽録りというものを実際に体験するのは生まれて初めてだった。そのせいか、私以外の人がプロでその中に1人社会見学に来た子供のようになっていたのだが、それを見せてはこっちの負けだと思い、さとられないように、

《なんて事はないぞ!》

という顔をしていたつもりだった・・・。でも井上ディレクターには見透かされていたようだ。

スタジオ
いよいよレコーディングを開始した。まず驚いたのは作曲家の村山さんが自らスタジオでビオラを演奏しているのだ。私はてっきりサンプラーで音源を持ってきてるようだし、村山さんは最終チェックで指示を出すだけの先生だと思っていたのだ(失礼をおゆるし下さい)。もうひとつ、たったの2小節しか録らないというのも驚いた。もう少し、まとめてやると思っていたのだ。

2人の音録りが昼休みもなく16:00になっても終わる気配がない。時間がかかる筈だ、2,3小節ずつ録ってはつないでループさせて編集して、しかも音楽はアレンジも含めて沢山あるのだ。大変そうだなあ、と思っても相変わらず私はやることがない。ここらで細見さんに頼まれていたCDを買いにタワーレコードまで行ってくるか!と気合いを入れ渋谷の街へ出た。まだ外は暑くて局に帰りつくまでに何度もアイスクリームが食べたくなったが、みんな頑張ってるんだから私が食べちゃダメだと我慢した。

スタジオに戻ると、今風のおにいさんが2人機材をたくさん台車にのせて待っていた。2人の音録りが終わったら、このお兄さんがギターを録るようだ。ここまでは音楽自体はバイオリンとビオラで曲調はスティーブ・ライヒで・・・これにエレキギター???どんな感じになるんだろう。ワクワクしてきた。

やっと2人の音録りが一段落して、待ちかねていたおにいさん登場!1本になった『清張のテーマ』にアドリブでギターを合わせている。村山さんの注文はあまりなくおにいさんの個性を大切にしているように見えた。ギターも収録が終わって井上ディレクターは「いいよねえ、ん〜、でもどこに使うかねえ」などと話かけてきたが、もう少し内容を把握できてたら・・・とちゃんと勉強していかなかった自分に後悔と悔しさが・・・。でも曲そのものは私もすごくいいと思ったし、とりあえずではあるがパーツではなく1曲で聴いて感激した。

野猿
しかし、村山さんが少し焦りだした。

「スタジオのリソースって24時までですよねえ」

でも、私達はあまり時間は気にしていなかった。たぶんみんな、

《まあ、26時ぐらいには終わるだろうなあ》

と思っていたからだ。やっと音録りが終わって、これからサンプラーで音を重ねてマルチトラックに音源をおとしていくのだが・・・これが思ったより時間がかかっている。どうもサンプラーの調子も悪いようで、村山さんのアシスタントの人が顔色を変えて「すいません」と汗を拭きふきがんばっている。この人お昼も夜のお弁当も食べていない・・・。

と、同時進行でMIX用におさえていた2階上のスタジオのスタンバイを東京と福岡の音声さんが2人でやっている。サンプラーの調子もよくなり、まずは1曲マルチにおとし終わった。それを持って走るように東京の音声さんが上のスタジオでMIXを始めた。MIXが終わるとやっと私の仕事ができた。DATテープ3本に1曲ずつおとしていくのだ。1本終わって下のスタジオに行くと、福岡の音声さんがいない。ディレクターに聞いてみると、隣のスタジオを開けてスタンバイしているとのこと。行ってみた。めちゃめちゃいいスタジオで、今まで使っていた部屋の2倍ぐらいの広さでしかも綺麗!

副調
感動していると、次が出来たと報告があり早速このスタジオでもMIXが開始された。同じ音のはずなのに環境のいいところで聴くと良くきこえるものだ。それからは、私も3つのスタジオを走りまわって、やっと全部おわったのが・・・あら、もうこんな時間。朝の6時半だった。撤収して局を出たのが7時半。

《う〜、太陽がまぶしい・・・・》

結局、「もう寝ずに帰ろう」ということになり、8時半にホテルのロビーで井上ディレクターと音声さんと待ち合わせした。1時間、中途半端な時間だ。案の定、音声さん疲れて寝たらしく遅刻。あわてて空港に向かう3人、空港までほとんど話てない。空港に着いてさすが井上ディレクター、3人分のチケットのキャンセルと予約をしてくれていた。

やっと福岡に着いた。私以外は早速今日からMAなのだ。この2人も福岡で待っていたみんなも疲れていた。私は細見さんにDATを渡して、曲の内訳を説明してホッとした気持ちで家に帰った。みなさん本当にごめんなさい。でも私は初めての音楽録りを体験できてすごく良かった。結局、その後自分の仕事が忙しくなって1度も見なかったのだが、初めてOAで見た時はやっぱり音楽が気になった。

《あのギターの曲はどこで使ったんだろうか?オープニングは時間で2種類つくったけど、どうなったんだろう》

まだ1度しか体験してないのでわからないけれど、音楽録りはきめ細かい作業の積み重ねで、何人もの音楽家やスタッフが関わって、人を感動させることが出来るから『おもしろい』のかもしれません。