ノンリニア編集。
AVIDによるCPU制御のハードディスク編集。
編集おばちゃん野田茂子さんについて。

編集中いつもお菓子がそばにあった。
お菓子でうもれた編集機。
撮影終了翌日の7月13日から編集作業は始まった。放送日が8月13日なので約一ヶ月間の猶予があると思いがちだが、ドラマを作る上での一ヶ月と言うのは、決して余裕があるわけではないのだ。

放送日からスケジュールを逆算すると、前日の8月12日までには完成しなくてはならない。

今回のスケジュールを参照すると以下のようになる。

VTR編集・・・7/13〜7/25
映像加工1・・・7/26〜7/28
音楽レコーディング・・・7/29〜8/1
MA・・・8/2〜8/10
映像加工2・・・8/11
プロデューサー試写・・・8/12


編集中このスケジュールを見ておわかりのように、VTR編集は2週間ほどしかないのだ。音楽レコーディングまでには編集を上げないと音楽の間尺がはかれない。あと半月程しか編集の時間は無いのである。来月放送と安心していたディレクター“野猿”井上の顔から血の気が引いた。実は偉そうに書いている私もライトマイアスファイヤーなのだ(笑)。

そんな中、いつも鼻歌を歌いながらコーヒーを入れてお菓子を身の回りから絶やさなかったお方がいます。東京でドラマの編集を主に行っている野田茂子さんです。

野田さんは編集だけでなく記録も兼任されました。記録とはスクリプター、正確にはスクリプトスーパーバイザーと呼ばれる重要な役目です。

ロケ先にて撮影というものは、台本の順番どおりに進んでいくことはまずありえません。役者さんの予定、ロケーションの状態、季節や天候、時間などでスケジュールは度々かわっていきます。そのうえ、一つのカットで一発オッケーということは殆どありえませんから、それら一つ一つを記録して行くわけです。現場では必ずディレクターのそばにピタリ寄り添い、常に首にはストップウオッチをかけ、手からは筆記用具とお菓子を離さない(笑)。

ビデオチェック
野田さんの「大丈夫、大丈夫」の言葉がどれだけスタッフ陣を安心させたことでしょう。野田さんは若いスタッフ陣の中で母親的存在でした。それに撮影、編集中、野田さんに話しかければ必ずといっていいほどお菓子をくれるのです。そんな野田さんをスタッフみんなは愛情をこめて「シゲさん」「シゲちゃん」と呼んでいました。もちろん“野猿”井上も助けられシゲさんに慕っていました。

編集マンの仕事はだいたいが夜行性です。夕方、編集室にあらわれて明け方帰っていく、まるで吸血鬼のようです(笑)。真夜中、編集室が密集した廊下を歩くと、「キュルキュル・・キュルキュル・・」と不気味な音がこだまします。我々、音響効果もたいがい夜行性なので、同類なのかもしれません。しかし、野田さんは超朝型なのです。朝6時頃にあらわれて夜遅くまでは決してやらない。

「頭が冴えているときにやるのが一番効果的でしょ?」

・・まったくである。では、みんな何故、真夜中作業するのか?朝、起きれないからかもしれない(笑)。

母親的存在で親しみやすい「シゲさん」ですが、最新のコンピュータを駆使したノンリニア編集をしてしまう程の【ハイカラおばちゃん】でした。我々が見ている間にも、アクションカットやダイアローグカットをスイスイとつないでいく。全く人は見かけによらないものです。

ちなみに、ノンリニア編集とは、フィルムやビデオテープのようなリニア(線形)な作業をとらず、そのデーターをコンピューターのハードディスクに入れ、あらゆるつなぎや効果を瞬時に試すことができるすぐれものです。従来のフィルムにおけるポジ編集やビデオテープでのオフライン編集から比べると、作業効率は当然合理的です。使っていたのは多分、アビッドのメディアコンポーザーだったと思います。

てなわけで、【ハイカラおばちゃん】こと編集ウーマンの「シゲさん」と“野猿”井上とディレクター近藤大で編集が行われ無事期日までになんとか仕上がりました。