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人々が日常生活の中で映画やテレビ,ラジオ等を当たり前のように見たり聞いたりしている昨今、「そんなものは見たことがない」「聞いたこともない」という人を探す方が難しい時代になりました。特にテレビなどはBS,CS,ケーブルテレビとチャンネル数だけでも殆ど青天井、インターネットも光回線でテレビ顔負けのコンテンツを配信。更にiPodの爆発的ヒット、携帯電話もワンセグ等の様々な仕掛けでメディアに参入してきています。
日本国内の情報はおろか、世界中の出来事や天気予報,交通渋滞,オークションからショッピングまで、ありとあらゆる情報がオン・デマンドで共有できるインターネットの登場。もはやテレビもこれまでか・・そう感じた人々が殆どでした。しかし、テレビという【便利な箱】は地上派デジタル放送を開始することでパソコンの特性をも吸収していこうとしています。厳密には吸収するのかされるのか判断に困るところもありますが、所謂、昨今いわれているミクスチャー文化の象徴的な部分でもあるように感じます。さらに【便利な箱】は、最近では薄型液晶ブラウン管の登場でもはや箱ではなくなりつつあります。
映画産業も今や映画館での興行収入よりDVDでのレンタルや売り上げの方がそれを上回る傾向が顕著となりました。確かに映画館やコンサートを見るためにわざわざ劇場へと足を運ばなくても、より廉価で自宅の【便利な箱】でそれらを楽しめちゃうんですから当然の事かもしれません。
「でもねぇ、映画は映画館で見るべきだと思いますよ〜。昔の歌じゃあないですけど『ポップコーンをほおばって・・(甲斐バンドの名曲です)』ね!あれがまた何とも言えずいいんだな。それとコーラ!コーラね!!ポップコーンを食べ過ぎて口がヒリヒリしてるところにシュワ〜っとした清涼感。これで決まりって感じ?でも、いつも決まってコーラが足りなくなっちゃうんだよね。途中で買いに行くわけにもいかないし、飲み過ぎてトイレが近くなるのも困るし〜。その点、テレビはいいよねぇDVDとかビデオなんかポーズかければ待っててくれるし〜・・」
「って、どっちなんじゃあああああ!!!」
・・・話が脱線しかけているので元に戻しましょう。
え〜、我々もですな、ご多聞にもれずガキの頃からテレビにしがみついておりました。その【便利な箱】からあふれ出る『お笑い番組』『ドラマ』『映画』等に心躍らせていたのです。そして親からは、
「なんばしよっとね!テレビばっかし見てから・・勉強せんね!(博多弁)」
と叱られたものです。皆さんも経験があるでしょ?
しかし、何故、テレビにこれほど大勢の人々が夢中になるのでしょうか?簡単で便利だからかもしれませんが、どうやらそれだけではないようです。テレビという【便利な箱】には、映像が映し出されるブラウン管、そして音が流れ出るスピーカーが付いています。どうやら我々や皆さんを夢中にさせているのは、その映像と音のようです。我々は音響効果(おんきょうこうか)の集団なので、音に特化してそのへんの謎を深くさぐっていきましょう。 |
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さて、『音を作る』という事を説明していこうと思うのですが、ネットやDTMなんかをされている方は当然ご存じなレベルのお話ですので、対象をビギナーさんに置いて進めさせていただきます。皆さんは「音作りって何?音響効果って新しい硬貨??」と思っている事でしょう(思わねえよなフツウ・・)。多分、音をわざわざ作っているということさえ理解できない方が殆どなのかもしれません。そういった方々にもこのような職業が存在しているということを少しでも知っていただきたいと思います。
我々は職種を訪ねられるとこう答えるようにしています。
「詐欺師です」
ち、違いました(あながち間違いとは言い切れないが・・)!!
「音響効果と言いまして、テレビやラジオ番組の音を作ることが仕事です」
すると、
「音を作るんですか?大変ですねえ・・で、何を作っているんですか?音楽ですか??」
概ね、決まってこういう返事がかえってきます。基本的に皆さんはこう考えていると思います。
“テレビの音は、カメラで撮影したとき映像と一緒に録れているんじゃないのかなあ?”
確かに、家庭用ホームビデオでもちゃんと録れるくらいですから、プロ用(業務用)の機械なら当然だろうと思うでしょう。ですが、入った音をそのまま使う訳ではありません。
ドキュメンタリー等でよく見る『時間経過』という演出手法を例に説明していきましょう。
最初のシーン。連日、夜になれば活況を呈する街、新宿歌舞伎町。その歌舞伎町の中心にある新宿コマ劇場前の広場には、夜の賑わいの中で帰る家もなく孤独に苦悩するホームレスの老人達の姿がありました。カメラは次の日、あの老人達は一体どうなってしまったのか?といったようなシーンを追っていきます。そのシーンとシーンの間に美しい朝焼けの映像を挟んで、いわゆる『時間経過』を表現したいとあるディレクターが思いました。その朝焼けの映像には、見たところ美しい映像収まっていますが、同時に収録された音はその美しい朝焼けの映像をも凌駕するほどの電気ドリルの音やダンプカーの通過の音しか入っていません。
ディレクターは、
「・・そういえば、これを撮影したとき、早朝なのに何故か近くで道路工事をしていたなぁ。そうかあ、夜間工事だな・・。しかし、これではあの老人達がどうなってしまったのか?視聴者の心配だああ、ドキドキものだぜえ!という緊張感を意図とする『時間経過』が表現できないじゃないか・・。」
と独り言のように、しかし、しっかり我々に聞こえるように呟きます。
そこで、効果マンの登場です!!
「効果マンって・・別にウルトラマンじゃないんだからどうしてマンなワケ?」
「・・すいません、私にもわかりません。教えて下さい」
とりあえず、音響効果が効果マン,音声が音声マンで,カメラがカメラマンと覚えておきましょう。その効果マンが音で『時間経過』を表現します。カシオペアの名曲『アサヤケ』をかけるんです。
「ちが〜う!!!」
「エエ〜ッ、そうかなあ・・めちゃめちゃイケてるやん、それ」
「どこがイケてんねん。キミ、ちょっと・・いや、相当疲れてるやろ?」
「ええ、最近ちょっと・・。」
などという信じられない光景を、偶に・・ごく偶に・・・目撃することがありますねえ。
通常は、以前どこかで収録してきたスズメや新聞配達人の自転車の音、遠くで通過する電車の音等・・沢山ある朝のイメージ効果音を映像と合わせていきます。勿論、全く音を入れない手法もありますし音楽でそれを表現することも多々あります。カシオペアの名曲『アサヤケ』を使用することで朝の軽快で活き活きとしたイメージを強調することも可能でしょう。ただ、今回の例に沿ったような《早朝のある種の静寂感》を表現するには無理があるようです。効果マンとディレクターのセンスの度合いにもよりますが、効果マンはそのシーンの狙いに沿った最も効果的な手法を選択していくのです。そうすることによってディレクターの狙いでもある『時間経過』を表す事が出来ます。
音は映像を撮影したときに一緒に収録されますが、映像で何かを表現したいと思ったとき、その撮影された映像と一緒に入っている音が必ずしも狙った意図とは一致しないものなのです。
我々音響効果は皆さんには決して悟られないように、音を作る事で番組や作品の意図する方向に皆さんを導いているのです。
「なにぃいい!だましやがったなあ!!それってウソじゃないかあ!」
そんなことも知らなかったの?今どきそんな人いるかあ?・・いるんです!!これが。
言っておきますが騙すという事とは根本的に違います。皆さんを楽しませようとしてやっていることなのです(楽しむという言葉にはインタレストという言葉のニュアンスも含んでおります)。現に皆さんは、特殊撮影・特殊メークアップ(SFXってやつです)を知っていながら映画を楽しんでいますよね?それと同じように今度は映像じゃなくて映画・テレビ・ラジオの音のことも知ってもらおうというワケです。
音を作るという作業、我々にとっては仕事柄、当然のように行われている事なんですが昔から決して表に出ることはありませんでした。しかし、このコーナーでは『音響効果』の裏側を紹介しつつ映画・テレビ・ラジオの世界にもっと興味を持ってもらおうと思っております! |
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